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“エージェントAI”が変える現場──「デジタルの奴隷」から脱する日本企業の条件

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“エージェントAI”が変える現場──「デジタルの奴隷」から脱する日本企業の条件

日本式デジタル化の現実

パソコン画面のAIに奴隷のようにこき使われているサラリーマン

かつて「デジタル化」が魔法のように聞こえた時代がありました。
しかし今、多くの企業がこう呟いています。
――「デジタルに使われてしまった」と。

私も食品業界で25年以上、あらゆるDXプロジェクトを見てきました。
効率化のはずが、現場の人が疲弊し、判断をシステムに委ねてしまう。
まるで“デジタルの奴隷”のように働く姿を、幾度となく目にしてきたのです。

そんな中、マッキンゼーの最新レポートが示す言葉が私の心に響きました。
「Agentic AI」――自律的に考え、行動するAI。
それは、単なる自動化ではなく、“共に働く相棒”のような存在だということです。

日本企業を蝕む「デジタル疲弊」の正体

過剰なシステム導入に疲弊したサラリーマンがいるオフィスの様子

なぜ日本企業は「デジタルの奴隷」になってしまったのか。
理由は明確です。「導入が目的化」していたからです。

ERP、RPA、BIツール…。
どの企業も“最新技術”に飛びつきました。
しかし、その多くは「現場を知らない」経営層の判断から始まっています。

私が以前携わったある食品メーカーでは、巨額を投じて自動発注システムを導入しました。
ところが、現場は「システムが出す発注数」に納得できず、結局は手作業で修正。
結果、在庫ロスはむしろ増えたのです。
“人がシステムを信じられない”状態こそ、デジタル疲弊の核心でした。

世界が注目する「Agentic AI」の力

自律エージェントAIが工場ラインで人と協働する未来的製造現場予想図

マッキンゼーの最新分析によれば、Agentic AIは単なるチャットボットではありません。
人間の意図を理解し、目標に向かって自律的に動くAI。
つまり「考える」「判断する」「行動する」AIです。

たとえば米国の製造業では、Agentic AIがサプライチェーン全体を監視し、
材料不足や異常値を検出すると、関連部署へ自動で代替案を提示します。
人は指示を出すのではなく、「判断をAIと共に磨く」存在になるのです。

この思想こそ、私が現場で求めてきた理想の姿でした。
“AIを使いこなす人”ではなく、“AIと共に考える人”になる――。
ここにこそ、日本企業再生のカギがあると感じています。

現場で見た“AI共生革命”のリアル

AIカメラが食品ラインを監視し品質データを解析する食品工場

私は今、食品工場の現場で「Agentic AI型DX」を実装をテストしています。
その変化は驚くほど人間的です。

たとえば、AIカメラがライン上の異常を検知し、
原因を「人に知らせる」のではなく、「一緒に分析する」。
AIが人の判断を補い、再発防止策を提案するのです。

このプロジェクトでは、現場スタッフの発言回数が導入前の2.3倍に増えました。
AIが“命令”するのではなく、“対話”を生む存在に変わった瞬間です。

こうした体験を通じて、私は確信しました。
AIは人の仕事を奪うのではない。
人の思考と情熱を取り戻すための道具になり得るのだと。

日本企業が今すぐ始めるべき3つの行動

ホワイトボード前でAIエージェントと人が協議する未来型チームミーティング

1️⃣ データを“AIに教える”文化を育てる
 AIは魔法ではありません。データを与え、教え、成長させる文化が必要です。
 特に中小企業こそ、LINE Botや画像診断ツールを活用して“小さな教師”を作るべきです。

2️⃣ 小さく始めて、速く回す“Agenticサイクル”を構築する
 完璧を求めず、3か月単位でトライ&ラーニングを繰り返す。
 失敗を「AIへの教育プロセス」と捉える柔軟性が、成果を加速させます。

3️⃣ “人の判断力”を再教育する
 AIが代替できないのは「感情」「倫理」「直感」。
 だからこそ、現場リーダーは“人間らしい判断”を磨く時間を持つべきなんです。

まとめ──AIに使われるな、AIを使いこなせ

人間とAIロボットが握手し共に未来を見つめている

AI時代において、本当に問われるのは「使い方」ではなく「関わり方」です。
人がAIを恐れず、AIが人を尊重する。
そんな共生の形をつくるのが、これからのリーダーの役割です。

私は信じています。
食品という“命の産業”だからこそ、AIとの共創はもっと温かく、人間的になれる。
テクノロジーの進化は、冷たく見えて、実は人を救うものなのです。

参考情報

  • 出典:McKinsey & Company “Seizing the Agentic AI Advantage”(QuantumBlack/2025年)

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